公共交通機関を使用した通勤を通じて日常の運動レベルの達成(原著表題:Achieving recommended daily physical activity levels through commuting by public transportation: unpacking individual and contextual influences)

健康・予防

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favicons?domain=www.sciencedirect ScienceDirect 2015.10.26 UPDATE

(2013年9月 ScienceDirectより 日本語で概要を要約) 健康のため運動が推奨されている一方で、人々の生活習慣を変えることは非常に難しいと考えられています。そのことから、公共交通機関を使用した通勤・通学は、多くの人の毎日の生活に運動を取り入れる方法として注目されています。 カナダの都市圏における毎日の通勤・通学に絞った公共交通機関使用による歩行距離と個人的・環境的要因の関連を検証したこの論文では、6913人の通勤日記から乗換を含めた歩行距離を導き、運動量を推計しています。結果から、公共交通機関の使用による運動量は男性が女性より0.7分(59m)、収入の高いグループが低いグループに比べて2分(202m)、そして10年年齢が低くなるごとに0.4分(36m)長くなると考えられました。総合して、推奨されている一日30分の運動を全体の11%の者が達成していると考えられました。

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日吉 綾子

スウェーデン・オレブロ大学 医学部 ポスドク研究員

結果の正確性についての検討の余地はありますが、バス停や道路地図を勘案して歩行距離を導いたことで、地域性と歩行距離についてユニークな視点で検討している点が面白いと思いました。

この研究によると、裕福なグループがそうでないグループより歩行距離が長かったのは地域性との関連だと考えられています。裕福な人が住む地域は広々としているためバス停の間隔どうしても広くなりがちな結果歩行距離が延びる一方で、混み合った平均収入のより低い地域は間隔が狭くなりがちであり、歩行距離が延び悩んだと考えられています。裕福な地域は電車の駅が近くにありがちであることから、これも歩きやすい要因となります。これらの結果として収入の多い層がより健康促進行動を日常生活に取り入れられているというのは、健康が医療サービスや個人の選択だけで形作られるのではなく、生活・仕事にまつわる様々な環境が関連していることを改めて浮き彫りにしていて、興味深かったです。

このコメントを書くきっかけとなった満員電車等の健康効果について注目した研究は見当たりませんでしたが(参照:http://healthnudge.jp/6626)、運動効果については上記のカナダの研究だけでなく、日本の研究でも一定の効果を認めています。東京圏在住で、デスクワーク職種に限った電車通勤(平均60分以上)と車通勤の男女206名の運動量を活動量計を使用して記録した研究でも、電車通勤が運動量確保に貢献していることが示されています(中野・井上、2010、産衛誌)。通勤時の運動量は一日の運動量の約6割を占め、電車通勤者は車通勤者より2.7倍歩行し、2.9倍運動していたそうです。電車通勤者のうち男性72%、女性50%が一日に8000歩以上歩き、男性54%、女性35%が厚生労働省が推奨する週の運動量を達成していました。

一方で、しかし、通勤のストレスを調べた研究では唾液のコルチゾールレベル(ストレスレベルの指標として広く使用されています)、自覚的ストレス度、いずれも通勤時間が延びるに伴い高くなり、集中力(文章の誤りを正しく校正できるかどうか)は低下することが報告されています(Evans & Wener 2006 Health Psychology)(注:他の通勤形態と比較したわけではありません)。
 
日本のような満員電車で長時間立ち続ける等、他の健康促進・阻害要因と合わせて考えた時にどうなのか、興味が湧きます。イギリスの国民医療サービス局(National Health Service)は運動のいかんにかかわらず、座り続けることが肥満や糖尿病等のリスクにつながるとして、昨年、通勤で立つこと、仕事場で30分ごとに立つこと、電話中に歩き回ること(!)等を推奨するとしました。立位・座位での使用可能な仕事机も導入も勧めているようです。

一方で、座っていた時間の長短は死亡リスクと関連していなかったとの報告もあります(Pulsford ら2015 Int J Epidemiol)。ロンドンの官庁で働く人を追跡したこの調査の著者らは、ロンドン中心部で働くという事は、それなりの通勤時間を立って過ごしている可能性が高く、そのことがある程度の運動効果をもたらし、ひいては座っていることによる健康阻害要因とバランスを取ったのかもしれないとしています。

日本の大都市で働く多くの人は、過去の私も含め、長い通勤時間を立って過ごすことも多いのではないでしょうか。少なくとも運動にプラスにはなっているようです。私は最近この立位・座位調節可能な仕事机になりました。少なくとも、立つことは気分転換になるようです。

参考文献:
Evans, GW., Wener, RE. 2006. Rail Commuting Duration and Passenger Stress. Health Psychology, 25(3), 408-412.

中野治美、井上栄. 2013. 東京圏在住サラリーマンの通勤時身体運動量. 産業衛生雑誌, 2010, 52, 133-139.

National Health Service. 2014. Why sitting too much is bad for your health. http://www.nhs.uk/livewell/fitness/pages/sitting-and-sedentary-behaviour-are-bad-for-your-health.aspx

Pulsford, RM., Stammatakis, E., Britton AR., Brunner EJ.,Hillsdon, M. Associations of sitting behaviours with all-cause mortality over a 16-year follow-up: the Whitehall II Study. Int J Epidemiol. In press.

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