赤ワインに含まれるポリフェノールの一種・レスベラトロールによる糖尿病から糖尿病性腎症への移行抑制効果を確認/メルシャン
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健康美容EXPO
2015.08.12 UPDATE
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テーマの面白さ
4.0点
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データの信頼性
1.0点
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誤解されない表現
1.0点
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総合評価 1人
2.0点
(2015年8月7日 健康美容EXPOyより) メルシャン株式会社は、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、糖尿病の代表的合併症の一つとされる糖尿病性腎症の予防効果を持つことを確認しました。この研究成果は、第9回 日本ポリフェノール学会学術大会にて、8月7日(金)に発表します。
健康情報を読み解くお手本素材のような記事ですのでとりあげました。
1)
”メルシャン株式会社は、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、糖尿病の代表的合併症の一つとされる糖尿病性腎症の予防効果を持つことを確認しました。”
→
研究の主体が、赤ワイン製造会社ですね。
「赤ワインが健康に良い」という結果しか報告しないことは明らかです。
(だからといってこの内容が嘘だとは言うつもりはないです)
2)
”この研究成果は、第9回 日本ポリフェノール学会学術大会にて、8月7日(金)に発表します。”
→
これは学会発表です。
学会発表とは、発表内容について事前に審査されないことがほとんどです。
発表では、好きなこと(都合のよいこと)を言えます。
解釈が間違っていても発表はできます。
3)
”・糖尿病性腎症を発症するモデルマウスにレスベラトロールを経口投与し、4週間飼育しました。”
→
人間での研究ではありません。
マウスの結果をそのまま人間でも同じことがいえるぜ!なーんてことを考える人はいないとは思いますが(苦笑)
4)
”・投与完了後、糖尿病性腎症の発症直前段階で、血液中の糖尿病性腎症のリスクを反映するバイオマーカーの測定を行いました。”
→
あれあれあれ?
上の方で
”レスベラトロールの摂取には糖尿病から糖尿病性腎症への移行を抑制する効果があることを確認しました。”
と書いておきながら、研究で解析したのは、「糖尿病性腎症への移行」ではなく、「糖尿病性腎症への移行」するリスクになるある物質(バイオマーカー)の濃度、だそうですね(「サロゲートエンドポイント」といます)。
そのバイオマーカーの濃度を下げたところで、本当に糖尿病腎症が抑制されるかは別の議論です。
5)
”・この結果より、レスベラトロールは糖尿病から糖尿病性腎症への移行を抑制する作用を発揮する可能性が強く示唆されました。
・今回の結果を受け、レスベラトロール摂取は、同じく酸化ストレスに起因する他の腎症への予防効果や、それらの進行により起こる慢性腎臓病への予防効果を持つことも期待されます。”
→
そうかなぁ、記事を読んだ限りでは、「強く示唆」する根拠が私にはよくわかりません。
&
”レスベラトロール摂取は、同じく酸化ストレスに起因する他の腎症への予防効果や、それらの進行により起こる慢性腎臓病への予防効果を持つことも期待されます。”
は明らかに言いすぎです。
私の結論:
メルシャン株式会社は、科学を利用して、拡大解釈をし、一般消費者に過剰な期待を抱かせるような内容を記載していると私は思います。個人的にはこの記事を読んで、かなりイメージダウンしました。私は、このような企業の商品を今後買う可能性は下がると思います。家族や友人にも当然おすすめしません。
「総合評価」に関して
HEALTH NUDGEでは、ご紹介する記事に関して、専門家の方々が3つの視点から評価をしています。
テーマの面白さ
新規性や注目度、有用性などが高く、テーマが面白いといえるか?
データの信頼性
根拠となっている研究やその他の情報がどれだけ信頼できるか?
誤解されない表現
事実解釈や結論に無理はないか(特に効果を過大解釈していないか)?
詳しく知りたい場合はこちら >
坪谷透
東北大学大学院歯学研究科 助教、博士(医学)、医師
信頼できる国立健康・栄養研究所の「レスベラトロール」についてのページより一部抜粋。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail1715lite.html
”主に赤ワイン、赤ブドウの果皮、ぶどうジュース等に含まれるポリフェノールの一種である。ヒトでは経口摂取した場合、代謝過程で抱合や修飾を受けるため、血漿中にレスベラトロールとして検出される量は非常に少ないことが報告されている。”
→
あらら?
じゃぁもしレスベラトロールが健康に良いとしても、赤ワインを飲んでもレスベラトロールの濃度は上がりませんねぇ。残念だなぁ。
”俗に、「寿命を延長する」「抗酸化作用がある」「抗炎症作用がある」と言われているが、ヒトでの有効性ついては調べた文献に十分なデータが見当たらない。”
→
さらに研究を重ねて、そのような効果があることがわかるといいですね(棒)
”サプリメントなどの濃縮物として摂取した場合の安全性についても調べた文献に十分な情報が見当たらない。”
→
効果も安全性も不明ということですね。
そんな物質を積極的に摂取するメリットあるんかいな・・・
”エストロゲン様作用があるため、ホルモン感受性疾患がある場合は使用を避ける。”
→
子宮体がんや乳がんがある方(既往含む)は要注意ということですね。
一応補足しますが、私は赤ワインを飲みます。
時にチーズと生ハムと一緒に飲んだり、ステーキなどにはやはり赤ワインが合うと思います。
高級ワインの良さは正直よくわかりませんが・・・(まぁそれはある意味幸せ)
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近藤尚己
東京大学 大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野 保健社会行動学分野 准教授 医師 社会疫学者
ためになる坪谷先生のコメント。自主規制せず、好きな形で報道するメディアもよくない。
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前田 由加
健康記事はこうやって読めばいいんだ!というポイントがまとまっていて、とてもわかりやすかったです。
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坪谷透
東北大学大学院歯学研究科 助教、博士(医学)、医師
ここらへんの健康情報を読み解くことに興味がある方には以下の本がおすすめです。とてもわかりやすく読みやすい本だと思います。中学校の保健体育とかに導入すればいいのにと思います。
検証!がんと健康食品 単行本 – 2005/9/30
坪野 吉孝 (著)
http://www.amazon.co.jp/%E6%A4%9C%E8%A8%BC-%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%A8%E5%81%A5%E5%BA%B7%E9%A3%9F%E5%93%81-%E5%9D%AA%E9%87%8E-%E5%90%89%E5%AD%9D/dp/4309251978/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1439346833&sr=8-2&keywords=%E5%9D%AA%E9%87%8E%E3%80%80%E5%90%89%E5%AD%9D
食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか (文春新書) 新書 – 2002/4
坪野 吉孝 (著)
http://www.amazon.co.jp/%E9%A3%9F%E3%81%B9%E7%89%A9%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%82%93%E4%BA%88%E9%98%B2%E2%80%95%E5%81%A5%E5%BA%B7%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%92%E3%81%A9%E3%81%86%E8%AA%AD%E3%82%80%E3%81%8B-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%9D%AA%E9%87%8E-%E5%90%89%E5%AD%9D/dp/416660242X/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1439346833&sr=8-3&keywords=%E5%9D%AA%E9%87%8E%E3%80%80%E5%90%89%E5%AD%9D
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坪谷透
東北大学大学院歯学研究科 助教、博士(医学)、医師
コメントありがとうございます。
一応補足で付け加えますが、私は、日本ポリフェノール学会学術大会に参加したことも演題を出したこともないので、日本ポリフェノール学会学術大会が、発表内容をあらかじめ審査しているかはわかりません。
ですが、私が知る限りでは、日本の学会は一般的に、
・一般演題内容はあらかじめ審査されない(一部の臨床系の大手の学会は審査があり内容によって落とされることもあるようですがそれは少数派といってよいでしょう)
・仮にあらかじめ審査があったとしても、当日発表する内容(記載内容、発言内容)までは、学会側が介入してくることはないのではないかと思います
です。
医療系の研究については、
・学会発表は、「ふーん」くらいの理解で、
・細胞やマウスでの発表も、「ふーん」くらいの理解で、
良いのではないかと思います。
人間のデータでの興味深い発表があったら、「ほぅどれどれ」、と身を前に乗り出して内容を精査します。
その後、「なーんだ」となることも多いですが。
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nanaochan
学会発表って、審査されないことが多いという点に驚きました。今度から、学会発表の記事は軽く読むことにします。。。
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佐々木 由樹
管理栄養士 健康運動指導士 MPH(公衆衛生学修士)
5つのポイントに分けた記事の読み方が、とても分かりやすいです。
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