「受動喫煙」大動脈疾患死亡が約2倍に
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yahooニュース
2017.08.29 UPDATE

厚生労働大臣が内閣改造で交代し、受動喫煙の対策強化法案の行方が微妙となっている。タバコを吸う能動的な喫煙も、そしてタバコから出たり喫煙者の呼気からの煙による受動的な喫煙も、健康に悪影響を及ぼすことは、広くよく知られた「常識」だ。
記事の元となったのは筑波大のプレスリリースです。
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201707311400.html
日本の有名な研究グループが受動喫煙と大動脈疾患とが正の関係にあることを示したという内容です。医科学的に意義のある報告と思います。
私が疑問に思っている点を解説したいと思います。この記事で述べている大動脈疾患は比較的レアな疾患です。その死亡率は喫煙暦のない、さらに受動喫煙をしてないという人で一年間で平均して100,000人中10~20人ほどです。
同じ研究グループで確認されている他の疾患を発症率は、概算でたとえば:
胃がん 100,000人中170人
脳卒中 100,000人中130人
大腸がん100,000人中130人
虚血性心疾患100,000人中60人
肺がん 100,000人中70人
があげられます。大動脈疾患の死亡率が100,000人中10人強と考えると、もっと注目したいのが他の主要な疾患の発症であることがわかると思います。
この記事の冒頭には受動喫煙政策との関係が書かれていますが、一般的に健康に関する政策を考える際、レアな疾患一種について着目することはしません。メジャーな疾患とともに少なくとも総合的に考える必要性には触れたいです。また心疾患、脳卒中といった疾患と受動喫煙との関係がこの研究グループではどれほど確認できたかまだ報告されていません。今後の論文・報告に期待したいところです。
筑波大の大元のプレスリリースを含めて、報道としては大動脈疾患を発症する率は他の疾患よりも低いこと、さらに他のメジャーな疾患についての日本からの報告は少ないこと、可能性など触れてもらえればよかったかなという印象です。
※ちなみに、このグループからは肺がん、乳がん、すい臓がんなどについて平均的な受動喫煙との関係があるといえる結果は得られなかったようです。
今回のコメントで掲載された内容については以下の論文を参考にしています。
Ozasa, Asian Pacific J Cancer Prev, 2007;8:89-96
Lin et al., J Epidemiol, 2008;18:77-83
Yamagishi et al, Am J Clin Nutr, 2010;92:759-65
Matsuo et al., Ann Oncol, 2012;23:479-490
Lin et al., Pancreatol, 2013;13:279-284
Yamada, et al., J Epidemiol, 2014;24:370-378
Wakai et al., Cancer Sci, 2015;106:1057-1065
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