料理を“数字”で表現した栄養学の母
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JBpress
2016.04.01 UPDATE

(2016年3月25日 JBpressより) お菓子のレシピ集で、何度も版を重ね、すこぶる評判のいい本がある。小嶋ルミ著『おいしい!生地』(文化出版局、2004年)だ。私も人から薦められて買い、ページをめくってみて驚いた。 とにかく記述が細かい。お菓子のレシピにありがちな曖昧な表現を避け、数字を多用している。たとえば、「バターを室温に戻す」は「20~23℃」と明記され、メレンゲづくりの「卵白を角が立つくらいまで泡立てる」はハンドミキサーで「10秒間に30回くらい」速く回すといったように書かれている。
この記事は料理のお話ですが、医療にも繋がるかなり奥深いテーマを取り扱っていると思います。料理の世界も、医療でいう「ゴッドハンド」のような神がかったシェフが注目を集めますが、レシピを数値で記述することで、ある程度一定の味を再現できるようになるのは確かかもしれません。医療の世界でも、以前からこのような取り組みを続けていて、例えば抗がん剤などは薬剤の投与量・期間・手順などを定めた「レジメン」と呼ばれる一種のレシピがあり、効果の最大化と副作用の最小化を求めて日々改訂されています。
以前は「さじ加減」と呼ばれたものも、このように数字で表現することで、ある程度知識が一般化していくことは、質のばらつきを防ぐ上でとても有用です。経営学の世界で発達した考え方に「暗黙知」というものがありますが、人々が持っている知識・経験・勘のようなもの(暗黙知)を、いかにして言語化された情報(形式知)にして共有するか、と言うことが、大切だと言われています。「標準化」や「マニュアル」といった単語は、時に否定的に使われることもありますが、本質的には暗黙知を形式化するプロセスです。料理を“数字”で表すのはその具体例ですね!
そうはいっても、なかなか形式知に出来ないものもあるようです。それだからこそ、本当の「プロ」がいつまでもプロたる所以なのかもしれませんね。
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